はっぴいえんどについて
■ 日本語でロックを作るという挑戦
はっぴいえんどは、細野晴臣(ベース/ボーカル)、大瀧詠一(ギター/ボーカル)、松本隆(ドラム/作詞)、鈴木茂(ギター)によって1969年に結成されたロックバンドです。前身はエイプリル・フールで、1970年に1stアルバム『はっぴいえんど』、1971年に『風街ろまん』、1973年にロサンゼルス録音の『HAPPY END』を発表しました。活動期間は短いものの、その後の日本語ロック、ニューミュージック、シティポップ、J-POPへ非常に大きな影響を残しています。
当時の日本のロックには、英語で歌う方が本格的だという価値観が強くありました。はっぴいえんどは、英米のフォークロックやサイケデリックロックを吸収しながら、松本隆が書く日本語の情景を自然に旋律へ乗せました。この試みは「日本語ロック論争」と呼ばれる議論の中心になり、後世には日本語でロックを成立させた先駆者として位置付けられています。
■ 『風街ろまん』と失われる東京
代表作『風街ろまん』には、「風をあつめて」「抱きしめたい」「夏なんです」「はいからはくち」などを収録しています。松本隆の歌詞には、路地、路面電車、瓦屋根、夏の光といった、都市開発で消えていく東京の風景が描かれました。「風をあつめて」は細野晴臣が作曲と歌唱を担当し、力を抜いた声、浮遊するコード、朝靄の中の街を思わせる言葉によって、後年のシティポップにもつながる感覚を示しています。
大瀧詠一作曲の「春よ来い」「12月の雨の日」、鈴木茂作曲の「花いちもんめ」など、作曲者によって曲調が異なるのも特徴です。細野はフォーク、カントリー、南国的な響き、大瀧はアメリカンポップス、鈴木は鋭いギターロックを持ち込み、それを松本の日本語詞が一つのバンド像へまとめました。
■ 解散後に広がった影響
解散後、細野晴臣はティン・パン・アレーやYMO、大瀧詠一はナイアガラ・レーベルと『A LONG VACATION』、松本隆は歌謡曲の作詞家、鈴木茂はギタリスト/編曲家として、それぞれ日本音楽の中心的な仕事を残しました。はっぴいえんどが後世へ与えた影響は、バンド単体だけでなく、この四人が別々の場所で発展させた音楽にも表れています。
「風をあつめて」は映画『ロスト・イン・トランスレーション』で使用され、海外でも再評価されました。サニーデイ・サービス、くるり、星野源をはじめ、日本語の響きと生活風景を重視する多くの音楽家に影響を与えています。
カラオケでは「風をあつめて」「夏なんです」「はいからはくち」が代表的です。音域は極端に高くありませんが、原曲の魅力は力を抜いた歌唱、言葉の間、少し後ろへ置くリズムにあります。声を張り上げるより、風景を思い浮かべながら語るように歌う方が適しています。
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