髙木ますについて
■ 不穏な題名と物語を鏡音リンに歌わせるボカロP
髙木ますは、2018年5月に「君は美人じゃないから。」で活動を開始したボカロPです。主に鏡音リン、鏡音レン、GUMI、初音ミクを使用し、ロックを基盤にした楽曲へ、思春期の孤独、容姿への劣等感、集団からの排除、現実と空想の境界を描いています。
デビュー曲の題名から、聴き手を安心させる一般的な応援歌とは異なる方向が明確です。「君は美人じゃないから。」は、他者から評価される容姿と、そこから生まれる自己認識を真正面から扱います。優しい言葉で問題を覆わず、傷つける言葉そのものを曲名へ置くことで、主人公が置かれた状況を最初から提示しています。
■ 少女たちを中心にした連作的な世界
代表曲には「裏世界友達同盟-十七歳ノ章-」「紫苑峠一丁目」「もっちょこちょい」「状態異常」「2018」などがあります。学校、町、峠、裏世界といった具体的な場所を置き、そこへ居場所のない人物や、普通の社会から少しずれた人物を登場させます。
「裏世界友達同盟-十七歳ノ章-」という題名には、現実の友人関係だけでは救われない十七歳の人物が、別の世界に仲間を求める物語が示されています。「紫苑峠一丁目」では、実在しそうで存在しない住所を使い、日常のすぐ隣に異界がある感覚を作ります。
使用ボーカルでは鏡音リンの比重が高く、鋭い高音、幼さ、強い子音を生かしています。少女の弱さだけでなく、怒り、皮肉、攻撃性を歌わせることで、かわいらしい声と暗い題材の落差を作ります。鏡音レン、GUMI、初音ミクを使う際も、曲の人物像に合わせて声を選びます。
■ ロックとネット文化の語感
サウンドは、歪んだギター、速いドラム、反復するフレーズを中心にしながら、曲によって電子音や不安定な展開を加えます。歌詞には、SNS、若者言葉、架空の組織名、病名のような語彙が入り、2010年代末以降のネット上の孤独を感じさせます。
「もっちょこちょい」は鏡音リンと初音ミクを使用した作品で、複数の声を掛け合わせる楽しさがあります。単独の主人公だけでなく、友人、集団、もう一人の自分という関係を声の違いで表現できることが、複数VOCALOIDを使う利点です。
カラオケでは、鏡音リンを想定した高音、細かな言葉、急な声色変化が難所です。綺麗に歌うだけでなく、台詞、苛立ち、笑い、弱さを曲ごとに演じる必要があります。髙木ますは、十代の人物が抱える醜さや居場所のなさを、架空の町と物語へ変換し、鏡音リンの声で強く印象付ける作家です。
髙木ますの楽曲情報
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